カオス・チャイルドのTRUEの感想です。嘘と真実をテーマにした物語もついにフィナーレ。最後まで王道を外したシナリオ展開が興味深かかったです。
ネタバレなし感想 箇条書き
・誰にでも噛み付くナチュラルボーン反抗期の久野里がわずかにデレた!TRUEってある意味久野里ENDなのでは?というくらい澪が前より丸くなって拓留に敬意を持っているとわかるのが良かったですね。
・乃々の、久野里の、そして拓留のただ他人を思いやる行動に視界が滲みました。拓留なんて18歳にして聖人になってるよ。完全に悟ちゃった。
・拓留、久野里、神成の間でガッチリとした信頼関係が出来ていて熱いです。
・カオス・チャイルドのラスボスとも取れるあの人がゲスい悪役としてはいい感じでした。ただこの人、思ってたよりも小物で残念。厨二病的な支配者思想だけは大仰だけど他力本願がかっこ悪い。狂気の表情でブチ切れるシーンも怖いというよりは、人のせいにして怒っちゃってだっさ!難癖つけてくるクレーマーさんですか?という感じです。
・カオス・チャイルドってことごとく王道の真逆の展開で魅せてくる作品なんですよねえ。シュタインズゲート的な展開を期待してるとショックを受けますよホントに。TRUEはプレイヤーに、お?っと期待を持たせながら、それを裏切るビターな展開でした。
・世莉架編といいつつ、拓留編だなあとも思いました。まあタクと世莉架の関係を考えたら世莉架ルートが拓留ルートなのも当然なんですが。
▲久野里澪の微デレが見られるTRUE
以下ネタバレ記事のため注意して下さい。
以下ネタバレ “カオスチャイルド”の2つの意味
①ヒロイン・尾上 世莉架の事。
②【カオスチャイルド症候群の患者たち】の事。
①について。世莉架は拓留がギガロマニアックスの力で妄想を現実化して生み出した子供のような存在です。カオスチャイルドのパッケージ画像も世莉架が胎児のように描かれていますね。このパッケージ絵は後でみるとかなりのネタバレを含んでいることがわかりますね!
また世莉架は複数の人格を持っているのが混沌(カオス)だと言える。共通ルート前半では天然の明るい少女で終盤から冷徹に殺人を遂行するクールな戦士のようでもある。乃々ルートでは嫉妬に狂った悪女。
悪女おっけいは乃々がひた隠しにしている黒歴史を拓留にバラして嫌がらせをするという、序盤からは考えられないほどの性格の悪いおっけいさん。どれが本当の彼女の素顔かわからないし、乃々ルートではこれらの人格が混じり合っているシーンが多く描かれていてとっても狂気的。実にカオスでした。
まさにこれ▼
乃々(泉理)は親友である本物の来栖乃々を演じることで、本当に心の強い献身的な女性に成長した。一方で世莉架は拓留の側にいる普通の女の子を演じていたけど、その姿が彼女の本質になることはなかった。この2人の決定的な違いは何なのでしょうか?
乃々編についてはこちら▼
そもそも、世莉架はその存在意義に深刻なエラー抱えている(拓留の望む世界を実現するためなら、思考盗撮で彼の思考を読んで殺人でもなんでもやる)という、どうしようもない設定ミスがあるとしか思えないリアルブーテッド少女。
渋谷地震の時、生まれたての世莉架が拓留のためにやったのは拓留が「こんな親いなくなればいい!」と思っていたネグレクト両親の殺害で、最初から道を間違えてる。
これはもう拓留が普通の女の子に改変するのが一番ベターな解決策なんでしょうね。忘れたほうが幸せなことだってありますから。
シリアルキラー・尾上世莉架は“なかったことにして”よかったのだ。
②【カオスチャイルド症候群の患者たち】について。当然“カオスチャイルド”は【カオスチャイルド症候群】のことですが、共通ルートで話されていたような、渋谷地震によるPTSD(トラウマ)ではなかった。そりゃそうだよね。作品名入ってるのに単なる一般的なPTSDのハズがないと思ってました。
▲肉体が老人化した上、その事実に気が付かないカオスチャイルド症候群の患者。
【渋谷地震】で地獄のような光景を目にして強烈なストレスに襲われた若い世代は、自分の心を守るために“こんな酷いことは嘘だ。現実であるはずがない”と思い込んだ。そこにカオスヘッド終盤で発生する“白い光”が反応したことが間違いの始まり。
彼らは外見が老人化する現象が降りかかると同時に、妄想で嘘の五感を作りだし、自分たちにとって都合のいい夢の世界に逃げ込んだ。これは“妄想シンクロ”と呼ばれるもので、渋谷の【カオスチャイルド症候群者】たちが脳波を介して全員で都合のいい妄想世界を共有していた。
彼らにとって老人化現象に気づいてしまうような、情報は一切認識されない。普通の中高生として楽しく学校生活を送っていると思い込んでいた。この自分に都合の悪い情報は知覚しないっていう状態は
創作の話じゃなくて脳の機能として現実に存在します。ヒトは脳幹にあるRAS(網様体賦活系)という部位にフィルター機能があり、自分にとって関係ないと思う情報を遮断しているのです。これは目の前の現象全てを情報処理してたら脳がすぐにパンクするので脳の負担を減らすための機能であると言われてます。
カオスチャオルド症候群はこのRASのフィルターを大げさにしたものだと思いますが脳科学の知識がベースなんですね。
話がそれましたが、拓留が「情弱!情弱!」って一部のサイトだけ見て自分に都合のいい情報だけを鵜呑みにするクラスメイトをバカにしてましたけど、老人化現象を発症していた拓留はもちろんヒロイン全員が情弱だったと言えます。
なぜなら拓留たちも自分たちが老人化しているという知りたくない情報は知覚から遮断して無視してましたから。(カオスチャイルド症候群にかかっていない世莉架と久野里は除く)
ポジティブ妄想と本当のポジティブ
▲和久井は300人委員会の人間で拓留と【カオスチャイルド症候群者】を観察していた。
そして碧朋学園は症候群者の収容施設。学園の生徒たちは全員でポジティブ妄想を常時発動していた!という事だったんですね。このポジティブ妄想は世界がバラ色にしか見えないメガネなので、当然ダメなポジティブ。
あるべきポジティブ思考というのは現実の辛い部分、思い通りにならない部分を冷静に直視した上で懸命に努力してる人間が持ちえる思考だと思うんですよね。やれることは全部やってるからきっと大丈夫。後悔はない!という心境。
そう、健全なポジティブ思考で現実と戦っていたのは、魔法のような現象を起こすギガロマニアックスや、異常なニュージェネの狂気再来といった嘘のような現実に真正面から向き合い捜査に尽力していた神成さんや、カオスチャイルド症候群という難病の治療のために研究に明け暮れていた久野里。
そして症候群(妄想の世界)から唯一帰還して、乃々(泉理)たち他の症候群者を助けるために久野里に手を貸していた拓留がそうですね。
「僕(私)は君なんて知らない」
拓留はニュージェネ再来の世莉架の一連の殺人の罪を肩代わりして一生出られないであろう牢獄へ向かう。拓留によって記憶を改変され普通の女の子になった世莉架は、拓留と二度と会うことのない新しい人生を歩み始める。
TRUEの最後、拓留がAH東京総合病院を出て刑事と一緒に警察に向かうシーンで世莉架と再開するんですけど、世莉架の記憶は戻らない(ように見える)二人共、お互いのことを“知らない人”ときっぱり言う。これは心に刺さる。
TRUE【世莉架編】は事件の事を“何も知らない普通の女の子”に改変された世莉架の記憶探しの物語なんですけど、思い出の断片に導かれて渋谷に戻り碧朋学園に行ったり拓留に合って行動を共にするけど結局、記憶が戻りそうな描写をしつつ戻らないんですよね。
ラストシーンで世莉架が拓留を見て「ううん、知らない人」と言いつつ泣いていたので、もしかしたら記憶は戻ってるのかもしれません。仮に世莉架が記憶を取り戻していたとしても彼女は「拓留の気持ちを汲んで新しい人生を生きようとする」と思うので、きっと2人の人生は永遠に交わることはないんでしょうね (;ω;)
余談ですが、最後はものすごいハッピーエンドの「シュタインズ・ゲート」とは対称的なラストですよねえ。紅莉栖との思い出を犠牲にして彼女を助けた岡部ですが、後日紅莉栖と再開して、世界線の変動によって消えた彼女の記憶は戻って続編の映画ではすっかり元の仲良し関係に戻ってますし。
シュタゲのラストは王道で燃えますが、終盤で鈴羽が再び未来からやってきて【オペレーション・スクルド】(紅莉栖救出作戦)を持ちかけられて以降の展開は少々都合が良すぎると感じる部分もある。
そのため、カオチャのホロ苦いラストで締めるというのも物語としてはアリだと思います。それと記憶が戻っても戻らなくても、もう世莉架はギガロマニアックスと委員会とか非日常の世界に関わっちゃダメだと思う。拓留の願いは世莉架の普通の幸せ。そこに僕はいなくていい。むしろいっしょにいたらダメになる2人。
うーんこの辺は現実にもありがちな人間関係なのでちょっと嫌になるな。自分の願望が原因で半身の彼女にやらせてしまった連続殺人の罪を全て背負って世莉架を守ったのは最高にカッコいいけど、これで本当によかったんだろうか?心にトゲが刺さったまま終わったなあ、カオスチャイルドは。
TRUEは拓留の他人を思いやる言動がとても多く彼の成長ぶりが大きく感じられるシナリオでした。自分はもう牢屋から一生出られないのに、人の心配ばっかりしてもう。しかしまあ拓留本人が「僕は自分のやったことに悔いはない、満足してるんだ^^」って笑ってたから、僕らの宮代ォが納得してるなら良しとしましょうかね。
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▼変化球だらけのカオチャも新鮮で良かったけどやっぱり王道のシュタゲが一番好きですね僕は!ということでシュタゲ再プレイしたので関連記事を追加します。
▼ゲーム『オカルティック・ナイン』が2017年に発売するので作品紹介の記事です。雰囲気としてはカオスシリーズとシュタインズ・ゲートのを足したような感じです。
チヨスタ新作ゲーム『アノニマスコード』の記事です。
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