“踏み込んで生きる”『僕だけがいない街』第十二話【宝物】レビュー

アニメ『僕だけがいない街』の最終回です。しっかり真犯人との決着をつけてくれてとてもよかったです。そして作品タイトルも劇中で回収。そうきたか!予想をずっと上回る面白さでした。ここまで最初から最後までブレずに一貫している作品はいいです。あとオープニングを見たら消えた悟が戻っていてよかったw

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八代らしい狡猾な罠で悟を追いつめるが…。

『僕だけがいない街』第十二話より引用
©2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会

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「君を待った、僕は待った」

病院の屋上で対峙する悟と八代。八代は悟を自殺に見せかけて殺す為のワナを仕掛けていた。白血病の久美ちゃんの点滴用の袋に筋弛緩剤を混入。“手術を苦にした少女の願いを訊き、彼女を尊厳死に導いた悟も後を追い屋上から飛び降りた”という八代のシナリオ。

いつものように自分を捜査から外すニセの証拠をでっちあげる。①点滴の袋には悟の指紋を付着させる。②久美ちゃんのケータイから自殺幇助を感謝するニセのメールを悟宛に送る。八代が11話久美ちゃんの病室でケータイをいじっていたのはこのメールを作ってたのか。相変わらずエゲつないな。宿敵の悟を殺すために久美ちゃんを犠牲にするか。

「何故オレの思考を先読みできた?」八代先生の壁ドンでちょっと笑った。15年前…自分の殺害計画を先回りして阻止できた理由を教えれば久美ちゃんだけは助かるかもしれないと言う八代。ここで蛍光灯の防水カバーらしきものに閉じ込められた蛾の死骸が写る。リバイバルで逃げる事はできないという暗示かな。

悟さん絶体絶命!かと思いきや、そうではなかった。悟は八代が自分を殺せない事を確信を持って告げる。「僕は先生の生き甲斐だった。僕は先生の希望だった」

「僕は先生の心を穴を埋めた」「先生は…僕に負けた」八代の心の内を完全に見透かして指摘する。

スクリーンショット(2016-03-30 16.35.12)八代を精神的に圧倒する悟。このカットは悟の絵の中でも屈指のイケメン。

『僕だけがいない街』第十二話より引用
©2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会

図星を刺された八代が叫ぶ「違う!」「違う!」「違ぁぁう!!!」いつも落ち着いている彼が声を荒らげる様は珍しい。「今回も…勝つのは僕だ!」悟は車椅子を猛スピードで漕いで進みダイナミックターン!何とそのまま後ろ向きで屋上から飛び降りようとする!

屋上から落下ギリギリの所で悟の車椅子を掴む八代。「先生には僕を殺せない」手を離せば悟は地上に落下して確実に死ぬという状況にも関わらず余裕のある態度で言う。本当に殺せないんだな。

ここで八代の回想シーン。この15年病室で眠っている悟を訪ねては何度も何度も殺そうとしては結局手を下す事ができなかったことが明かされる。七夕の短冊に“はやく目覚めろ悟”の願いを書いていた八代。どれだけ一途なんだ先生。完全に恋する乙女。オープニング

Re:Re』の歌詞のサビは八代の悟への気持とも取れますね。下記で視聴できるように音源を埋め込みました。(アニメ版の原曲ですがはサビが視聴できたのでチョイスしました)

Re:Re:ASIAN KUNG-FU GENERATION
2004/10/20

悟にわかってもらえて満足したのか。もう悔いはないのか。15年も待ち続けて疲れ果ててしまったのか。悟の後を追って投身自殺を図る八代の視線の先には      イタズラにウインクをする悟がいた。

スクリーンショット(2016-03-31 9.29.42)僕が死んだと思った?ウソでしたー(テヘッ! と言わんばかりにウインクをする悟。

『僕だけがいない街』第十二話より引用
©2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会

仲間の協力で予め地面にクッションを置いて助かっていた悟。ここでEDテーマ「それは小さな光のような」のインストゥルメンタル(ボーカルなし)が流れる。EDの歌詞も八代と悟の関係を歌っているようにしか見えなくなるw「僕だけが見てた君の事 過去も未来も」

9話で雛月が母親から保護された日。加代を車で送る別れ際に八代は悟にウインクをしていた。父親がいない悟は「先生は紛れもなく僕の父親だった。先生は僕の心を埋めてくれたと言ってたけど八代は敵であると同時に敬愛する父のような存在だったんですね。ウインクを真似して返したのは先生への親愛の証。

負けたよという顔で笑う八代先生。本当の自分を誰にも理解されず、ずっと孤独だった彼もまた悟に救われた。信頼できる仲間たちの力を借りて最大の宿敵である八代の心を救済した悟、完全勝利。

「“僕だけがいない時間“ それこそが僕の宝物」

八代は殺人未遂で逮捕。護送する警察車両。先生が満足そうな顔をしている。茜空に浮かぶ飛行機雲に虹がかかる演出はどういう意図だったんだろう。これはわからなかった。護送される八代を見送ると悟のモノローグが始まる。

「僕は11歳から25歳までの人生を失ってしまった。」「でもその“失った時間そのもの”が僕の宝物だ」悟が昏睡している15年もの間、友達や母が悟のために人生の貴重な時間を割いてくれた。美里が率先して募金を呼びかけたのは感動しました。

美里を含め友達みんなが悟の膨大な入院費を集めるために募金活動をしてくれた。カーチャンはずーっと働き詰めで更に毎日の4時間の悟の体のメンテナンスも欠かさなかった。広美は医者を目指して勉強をしてきた。それはきっと眠ってしまった悟を救いたかったから。

ケンヤは弁護士になりルポライターの澤田と一緒に犯人を追っている。ケンヤならきっと悟が犯人にやられて植物状態になったことも察しているんだろうなあ。

スクリーンショット(2016-03-30 19.01.40)悟の大切な仲間たち。ちゃんと美里も入ってるのが良いです。

『僕だけがいない街』第十二話より引用
©2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会

「僕だけがいない街 僕だけがいない時間 それこそが…僕の宝物だ」

ここで真のタイトル回収が来た!失った15年こそが素晴らしい。というコペクルニクス的逆転の発想にそうきたかという驚き。こんなセリフを悟に言われた上に小五の悟が嬉しそうに友達みんなに駆け寄って行くシーンを見せられたら涙が出てきてしまうよ。

あえて言うなら悟が植物状態だった15年はダイジェスト的にしか描写されていないので、悟だけがいない街で仲間たちがどれだけ悟の為に頑張っていたのか、そのエピソードをもう少し尺を取って見せてくれていたらもっと感動したと思います。

スクリーンショット(2016-03-30 16.23.37)悟の治療費の募金を呼びかける美里たち。この辺のエピソードをもっと見たかった。

『僕だけがいない街』第十二話より引用
©2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会

「踏み込めば道は開ける」

30代になった悟は漫画家として成功していた。『少年フライト』のビルの応接室で編集にネームを見せる悟。ネームを絶賛している編集者は1話ダメ出ししてた人だ。「いい〜じゃないですかァ!先生のこのズバッ!っと踏み込む感じ!」この編集者ほとんど出番ないけどブレないから好きだ。

2010年の1月末日。仕事場で漫画を描いていた悟は散歩に出かける。罪を着せられて警察に追われた時に逃げ込んだ高架下。そこで母が送って来た小学五年の時の日記を読む悟。日記のタイトルは『ぼくのヒーロー』自分には“踏み込む勇気”がないから本当の仲間がない。悟が憧れていたアニメのヒーロー「ワンダーガイ」のように踏み込こむ勇気が欲しいと綴ってある。

スクリーンショット(2016-03-30 16.23.12)ワンダーガイは悟のヒーローであり心の師匠。

『僕だけがいない街』第十二話より引用
©2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会

実際1話の悟(29)は人間関係が苦手であまり人に心を開かないタイプだった。だから事故った時も「連絡したいヤツはいないと」言っている。たぶん友達はいなかった。また「オレは自分の心に踏み込むのが怖い…とも

“自身の心に踏み込む”とはありのままの自分と向き合う事。それが怖いのは18年前に雛月もユウキさんも助けられなかったトラウマが関係している。カーチャンは悲しい事件の記憶を悟から消そうと必死だった。

事件の記憶を忘却させる事に成功したため悟は自分の内面と真っ向から向き合うことなく成長。その事が漫画にも表れていた。悟自身の本音、本当に伝えたいことを正直に描いていなかったんでしょうね。

どこか他人事のような作品。本当にそう思ってないのに思っているフリをしている作品。そんな作品からは作者の本気度は伝わらない。本音でないメッセージほどつまらないものはありません。

編集にもあなたの顔が作品から見えて来ない」とダメ出しされた。その悟がリバイバルで過去に戻り雛月を側で守る為には彼女と仲良くなる必要があった。だから積極的に友達になろうと行動した。元々他人に無関心だった悟が人の事を好きになろうと努力した。

また加代を守るのに一人では無理だと思いケンヤや広美を信じて事情を話した。雛月の虐待を察しながらも何もできなかったケンヤは悟の行動力に感動していた。悟が自分を信じて頼ってくれたのでケンヤも悟を信じて広美と一緒に力を貸してくれた。

そんな彼らは悟が力尽きて眠った後も彼のために一生懸命に力を尽くしてくれた。そして悟が目覚めた後は八代を捕まえる為の最終ミッションを皆で戦った。誰かを信じてあげれば向こうもそれに応えて信じてくれる。

その事を身をもって悟に教えてくれたのは愛梨だった。悟は彼女が背中を押してくれたから人に踏み込んで接するようになり自らの内面にも踏み込む事ができた。他人にも自分にも嘘をつかなくなった。「声に出てた…」って何回も言ってたねw

生き方を変えた悟の漫画はとても良いものになった。下手に周りに気を使ったりせず正直に己をさらけ出して描いたってことですね。本音を包み隠さずブチ撒けてるメッセージって良い悪いは別にして心に響きます。そう考えると悟が過去と向き合って人生を素晴らしくできたのって愛梨のおかげですね。

“2回目の2006年”。悟が誤認逮捕され愛梨との関係が途絶えた時と同じ高架下。ふと悟が指でファインダーを作ると青く光る蝶がファインダーを横切る。光る蝶をファインダーで追った先には……カメラを構え何度もシャッターを切っている人がいた。

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夢を叶えた悟は夢を叶えた愛梨と再会を果たす。

『僕だけがいない街』第十二話より引用
©2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会

悟に向かって一直線に走って来たその人は愛梨だった。「すごい雪ですね!」人生3週目の悟はおそらくピザ屋のバイトはしなかったので愛梨の主観では悟と初対面。ニット帽を取ると雪の結晶の煌めきとともに愛梨の美しい髪がファサッと舞う。

「いっしょに雪宿りしていいですか?」と訊く彼女。相変わらず元気っ娘でとてもよろしい。いつ出るかと思ってましたが最後の最後に持って来ましたね。1話で言っていた愛梨の夢ってカメラマンだったのね。

6話で愛梨が指でファインダーを作って景色を覗き込んだシーンはこの伏線だったのか。ちゃんと再会できてよかった。今の悟なら愛梨に踏み込んで仲良くなる事もできるね。しっかり捕まえておくんだぞ。

というわけでもの凄くキレイに終わったアニメ『僕だけがいない街』のレビューでした。正直ここまで面白くて心に響く作品だとは思いませんでした。“踏み込んで生きる”ってメッセージは一番印象に残った名言。また1話から見直したいなあと思わせてくれるステキな作品でした。